民法 その1: 総則(私権の基本)
以前民法の勉強戦略について、
で書きましたが、今日から講義のような形式で書いていきます。まずはざっくりとしたところを見ていきましょう。
今日のテーマは、総則のうちの私権のところです。ごく基礎的なところになりますが、次回のテーマである制限行為能力者制度、つまり未成年者や成年後見の制度の前提となるようなところです。
さて、私権というので、これはワタクシの権利ですね。国とか公とかではなく。でも法律用語的には、私法によって保護される権利です。つまり民法などによって保護される権利です。
で、私権の大枠として、まずその制限があるんですが、それは
- 公共の福祉の原則
- 信義誠実の原則
- 権利乱用の禁止
の三つです。それぞれについてはここでは書きませんが、字面から何となく分かるかと思います。これらに反しない範囲で私権があります。
私権を制限する原理は上記の通りですが、じゃあ誰がその私権を行使できる主体かというところでは、権利能力という概念が重要になってきます。権利能力は自然人と法人に認められます。というより、自然人と法人は権利能力を持つと思えばいいです。
(法人というのは会社とか学校のことです。といいきるとあれですが、人が集団で法律行為しているものは法人と思っていいです。NPO法人、宗教法人、一般社団法人、協同組合、などなど、国や地方公共団体も法人ですね。医療法人とか、行政書士法人なんかもありますね。その他、権利能力なき社団といったものもあります。あ、最後のものは法人と思わないでください…。)
で、この権利能力を巡って問題になるのは、その開始時期はいつか、終わるのはいつかだったりします。具体的には胎児に認められるか、とか、死亡と相続の関係とかで問題になってきます。
権利能力と並んで、私権で重要なのは、意志能力と行為能力です。意志能力とは「自己の行為の結果を弁識できる精神能力」を言います。やったことの結果が分かるという意味ですね。一般的には、幼児や泥酔者、重い精神障害や認知症にある人は意思能力がないとされます。
一方の行為能力というのは「単独で有効に法律行為をなし得る能力」です。
行政書士試験で問題となるのは、後者の「行為能力」の方です。どう問題になるかというと、法律行為の相手方と当人の両方を保護するため、行為能力を制限される人がいるからです。つまり未成年者や成年被後見人などです。これに該当する人たちの法律行為がどうなるか、無効になるとか取消になるとか、そういうことが問題になります。
また、制限行為能力者制度については、実務でも関係してくるので覚えておいて損はありません。具体的に言うと、成年後見制度における法定後見、任意後見は現時点でもかなり仕事としてあるし、今後どんどん増えていく分野だからです。
では次回、そのことについて書いていきます。
※私法 - Wikipedia 「私法(しほう)とは、私人間の関係を規律する法。国家等の公権力と私人の関係を規律する法である公法(憲法・行政法)に対置される。民法、商法などが代表的な私法の例。市民法と呼ばれることもある。」
※法律行為 - Wikipedia 私は法律行為がよく分からなくて苦しんだのですが、権利や義務を生じさせるようなものと思ってしまえばいいかと思います。遺言とか契約とか、法人の設立とか。もう少し言うと、法律に関係する行為、でもあるかと思います。契約を破ったら、損害賠償とか始まりますし、遺言で指定されたやり方が法定の相続より優先します。「あなたが好きだ」は法律行為じゃないですが、「結婚しよう」「ハイ」は多分、法律行為になります。